東北企業のM&Aにおける企業価値|売却相場の決まり方と高値売却のロジックとは
東北で会社売却を検討中の経営者様へ。本記事では、M&Aにおける企業価値の決まり方や、東北ならではのプラス査定・マイナス査定のポイントを解説します。高値売却を実現するための磨き上げ戦略や、建設・医療・観光など業種別の評価基準も網羅しました。
目次
「うちのような地方の会社に、一体いくらの値段がつくのだろうか」
M&Aや事業承継を検討し始めた東北の経営者様が、最初に抱く疑問ではないでしょうか。「長年積み上げてきた資産はあるが、設備は古い」「利益は出ているが、将来の人口減少が不安だ」。このような要素が絡み合い、自社の価値を正確に把握することは容易ではありません。
実は、M&Aにおける企業価値は、決算書の数字だけで決まるものではありません。東北という地域特有の人材の定着率や商圏の強さといった目に見えない資産が、時には数千万円、数億円というのれん代として評価されることがあります。逆に、広大な土地がマイナス査定になることもあり、そのロジックを知っているかどうかが、手取り額に大きな差を生みます。
本記事では、東北企業のM&Aにおける企業価値評価の仕組みから、業種別の査定ポイント、そして評価額を最大化するための具体的な磨き上げ戦略までを、プロの視点で徹底解説します。大切な会社を安売りせず、正当な評価を得るための指針としてお役立てください。
M&Aにおける企業価値とは?
多くの経営者様は、決算書の貸借対照表にある純資産の部が、会社の値段そのものであると考えています。しかし、M&Aの現場で用いられる企業価値は、この簿価純資産とは大きく異なる概念で算出されます。
M&Aにおける企業価値とは、過去の積み上げである資産だけでなく、その会社が持っている将来稼ぐ力や、ブランド・技術力・顧客基盤といった目に見えない資産をすべて加味した時価のことを指します。つまり、たとえ決算書上の資産が少なくても、高い収益性を誇る会社であれば、純資産の数倍の価格で売買されることが日常的に起こります。
特に東北地方の企業においては、バブル期以前に取得した広大な工場用地や、減価償却の終わった古い設備などが多く、帳簿上の価格と実際の市場価値に大きな乖離が生じているケースが多々あります。そのため、M&Aを検討する際には、まず「決算書の数字=売れる価格ではない」という認識を持ち、時価ベースでの再評価を行うことがスタートラインとなります。
企業価値を算出する3つの手法
企業の価値を金額換算する作業をバリュエーションと呼びます。このバリュエーションには、世界的に確立された主に3つのアプローチが存在します。
それぞれ計算の根拠となる視点が異なり、会社の規模や業種、M&Aの目的によって使い分けたり、併用したりします。東北の中小企業M&Aにおいて、これらの手法がどのように適用されるのか解説します。
コストアプローチ(修正純資産法)
コストアプローチは、貸借対照表の純資産に着目した評価手法です。中でも修正純資産法は、保有している資産と負債を、現時点での時価で再評価し、その差額を企業価値とみなす方法です。
工場や重機、広大な土地などの有形資産を多く保有する製造業や建設業において、企業価値の底値を確認するために必ず用いられます。客観性が高く計算もしやすい反面、この手法だけでは、その会社が持つブランド力や将来の成長性といった収益力が一切反映されないため、売り手にとっては厳しい評価額になりがちです。
インカムアプローチ(DCF法)
インカムアプローチは、企業が将来生み出すと予測されるフリーキャッシュフローを、現在価値に割り引いて計算する手法です。代表的なのがDCF法です。
将来の稼ぐ力を直接評価するため、理論的には最も合理的とされています。しかし、将来の事業計画書を作成する必要があり、その計画の精度に評価額が大きく左右されます。不確実性の高い中小規模のM&Aにおいては、買い手と売り手の認識のズレが大きくなりやすいため、あくまで参考値として扱われることが多いのが実情です。
マーケットアプローチ(類似会社比較法・マルチプル法)
マーケットアプローチは、市場の相場を基準にする手法です。類似会社比較法は、上場している同業他社の株価指標を参考に、類似企業が利益の何倍で評価されているかを自社に当てはめて計算します。
業界の相場感として直感的に理解しやすく、客観的なデータに基づいているため、価格交渉の根拠として頻繁に使用されます。例えば、「同業のA社がEBITDAの5倍で評価されているから、自社も5倍程度が目安」といった議論が可能になります。
【中小企業M&Aの王道】年買法(年倍法)の仕組み
学術的な手法は前述の3つですが、実際の中小企業M&Aの現場で最も頻繁に使われ、かつ経営者にとって納得感が高いのが年買法と呼ばれる計算式です。
これは、コストアプローチとインカムアプローチの簡易版を組み合わせたハイブリッドな手法で、以下の式で算出されます。
企業価値 = 時価純資産 + 実質営業利益 × 3〜5年分
この式の後半部分、「実質営業利益 × 年数」が、いわゆるのれん代に当たります。つまり、今会社を解散したらいくら残るかに、将来期待できる利益の数年分を上乗せして売却価格とする考え方です。
東北エリアのM&Aにおいては、業種や企業の強みによってこの年数倍率が変動します。一般的には3年程度が目安ですが、希少性の高い技術や強力な地域シェアを持つ企業の場合、5年分、あるいはそれ以上の倍率で評価されることも珍しくありません。こののれんをいかに高く評価してもらうかが、高値売却の最大のポイントとなります。
東北企業の価値を左右する「プラス査定」と「マイナス査定」
一般的な計算式で算出された金額に対し、実際の取引価格には、東北ならではの地域事情や個別企業の特性がプレミアムまたはディスカウントとして反映されます。
買い手企業が何に価値を感じ、何をリスクと捉えるのか。そのロジックを知っておくことで、自社の強みを的確にアピールし、弱みをカバーすることが可能になります。
【プラス要因】人材定着率と技術承継
人口減少が全国に先駆けて進行する東北において、人がいることそのものが極めて高い価値を持ちます。
首都圏の買い手企業にとって、地方進出の最大のハードルは人材確保です。そのため、離職率が低く、若手から中堅層の社員が定着している組織は、それだけで採用・育成コストの削減効果という経済的価値を生みます。
特に、施工管理技士、薬剤師、熟練の溶接工など、採用難易度の高い有資格者や技術者が在籍している場合、営業利益の積み上げ計算以上に、大幅なプラス査定が行われる傾向にあります。
【マイナス要因】不動産の流動性と維持コスト
一方で、東北の企業が抱えがちな不動産は、評価を下げる要因になり得ます。
かつての拡大期に取得した広大な工場用地や、社員寮、保養所などは、簿価が高くても、現在の市場ニーズに合わなければ無稼働資産と見なされます。特に、市街化調整区域にある土地や、山間部の土地は流動性が低く、売却しようとしても買い手がつかないことがあります。
さらに、建物が老朽化しており、修繕や解体に多額の費用が見込まれる場合、その将来コスト分が企業価値から差し引かれるリスクがあります。
【特殊要因】商圏独占性と公的需要
東北の地方部ならではの評価ポイントとして、商圏の独占性と公的需要の安定性が挙げられます。
人口が少ない地域では、競合他社が参入するメリットが薄いため、既存の企業が事実上の地域独占状態にあるケースがあります。これは競争がない安定市場として評価されます。
また、豪雪地帯における除雪業務や、インフラ維持管理業務など、景気変動に左右されない公的な需要を持っている企業は、爆発的な成長は見込めなくとも、長期的に安定したキャッシュフローを生む堅実な投資対象として、投資ファンドや安定志向の企業から高く評価されます。
業種別・企業価値評価のポイント(東北版)
同じ利益額であっても、属する業界によって買い手が見るポイントや評価倍率は異なります。東北の主要産業について、デューデリジェンスで特に重視される項目を解説します。
建設・土木業の評価
建設業の価値の源泉は、入札参加資格と施工能力にあります。
公共工事の入札ランクを決める経営事項審査の評点は、将来の売上見込みを測る最も重要な指標です。また、保有している重機や車両が適切にメンテナンスされ稼働しているか、そして何より、それらを動かす有資格者やオペレーターが確保できているかが問われます。震災復興需要などの特需による一時的な利益増ではなく、平時の施工能力と収益力がどの程度あるかが、厳密に審査されます。
調剤薬局・医療機関の評価
調剤薬局や医療機関のM&Aでは、処方箋と人が全てです。
応需している処方箋の枚数や、技術料単価といった収益指標はもちろんですが、M&A後に管理薬剤師や医師が継続して勤務してくれるかどうかが絶対条件となります。
特に地方の店舗では、薬剤師一人の退職が閉局に直結するため、人材の継続確約が取れるかどうかが、企業価値を決定づける最重要ファクターとなります。
運送・物流業の評価
2024年問題に揺れる運送業界では、コンプライアンスとドライバーが評価の分かれ目です。
保有しているトラックの台数や年式も資産価値として見られますが、それ以上に、ドライバーの年齢構成と、労働時間管理・残業代支払いが適正に行われているかが厳しくチェックされます。未払い残業代などの潜在債務がある場合、大幅な減額対象となるか、M&A自体がブレイクする可能性があります。
逆に、法令遵守体制が整っている企業は、大手物流企業のM&A対象として希少価値が高まります。
観光・旅館業の評価
観光業では、ハードとソフトの両面評価が行われます。
建物の耐震基準適合状況や、温泉権・借地権の権利関係といったハード面のリーガルチェックは必須です。その上で、客室稼働率や客単価、そしてOTAでの口コミ評価といったソフト面の資産価値が加味されます。特にインバウンド集客の実績やノウハウがある場合、将来の成長性が高いと判断され、高いのれん代が付く傾向にあります。
企業価値を最大化するための磨き上げ戦略
M&Aの査定額は、今のありのままの数字を受け入れるしかないわけではありません。売却前に財務内容や組織体制を整理し、磨き上げを行うことで、意図的に評価額を引き上げることが可能です。
役員報酬と私的経費の適正化
中小企業では、節税対策として役員報酬を高めに設定したり、経営者の私的な支出を経費計上したりして、あえて利益を低く抑えているケースがよくあります。
企業価値算定の際には、これらの節税的支出を本来の利益に足し戻す修正営業利益を用います。例えば、役員報酬を適正水準に引き下げ、私的経費を排除した場合、実際の営業利益はいくらになるのかを算出します。この真の実力値を論理的に証明し、買い手に提示することで、決算書上の利益ベースよりも高い評価額を引き出すことができます。これは正当な交渉術の一つです。
簿外債務とリスク情報の開示
悪い情報は隠しておきたいというのが人情ですが、M&Aにおいて隠蔽は致命傷になります。
未払い残業代、社会保険の未加入、土壌汚染、訴訟リスクなどの簿外債務やリスク情報は、デューデリジェンスの段階で必ず発覚します。後から発覚した場合、買い手の心証は最悪となり、大幅な価格減額を要求されるか、最悪の場合は信頼欠如により破談となります。
逆に、最初からリスク情報を正直に開示し、このリスクを解消するために売却代金の一部を充当するといった対策案を提示することで、買い手の安心感を醸成し、結果として適正価格での成約につながります。
誰に査定を依頼するかで売り値は変わる
誰が計算するかによって、算出される企業価値には大きな差が出ます。依頼する専門家の立場や目的が異なるためです。
顧問税理士による相続税評価の罠
顧問税理士に「うちの株価はいくら?」と聞くと、多くの場合は相続税評価額を算出してきます。これはあくまで相続税を計算するための基準であり、M&A市場で売れる価格とは全く別物です。
税理士の主な仕事は節税であるため、株価を低く評価するバイアスがかかりがちです。この低い評価額を信じてM&Aの交渉に臨むと、本来もっと高く売れたはずの会社を、相場より安く手放してしまうことになります。M&Aの価格を知りたい場合は、税務評価ではなく、ビジネスとしての時価評価ができる専門家に依頼する必要があります。
M&A総合研究所による市場価値に基づく査定
M&A総合研究所では、過去の膨大な成約データと、現在進行形で動いている買い手企業の需要に基づき、「今、市場で売れる最高値」を算出します。
教科書的な計算式だけでなく、「この業種なら、あの首都圏企業が欲しがっている」「この技術には希少価値がある」といったマッチングの現場感覚を加味します。さらに、AIマッチングシステムを活用して、東北の企業を最も高く評価してくれる本命の買い手を見つけ出すため、一般的な相場以上の価格提示が可能になります。着手金無料・完全成功報酬制のため、まずは自社の市場価値を知るための査定だけでも、リスクなく利用いただけます。
(URL: https://masouken.com/ )
東北エリアのM&A成功事例
実際に適正な企業価値評価を受け、納得のいく条件でM&Aを成立させた東北企業の事例をご紹介します。これらは、単なる資産価値だけでなく、将来性や無形資産が高く評価された好例です。
【宮城県・建設業】東北三上機材株式会社|将来性という「のれん」を評価
仙台市で建設関連事業を行う東北三上機材株式会社の事例です。中川社長は、震災復興需要後の成長戦略として、ポータルサイト運営などの新規事業を展開していましたが、自社単独での成長に限界を感じていました。
買い手となった岐阜県のメーカーは、同社の現在の収益だけでなく、若手経営者が育ててきた新規事業の将来キャッシュフローや、両社が組むことで生まれるシナジー効果を高く評価しました。その結果、将来性というのれんが十分に加味された価格での譲渡が実現しました。これは、過去の数字だけでなく、未来の可能性に価値がついた事例です。
【東北地方・人材派遣業】同業大手への譲渡でスケールメリットを享受
東北地方で製造業向け人材派遣を行うG社(売上5億円)の事例です。派遣業は設備などの有形資産が少ないため、純資産法などのコストアプローチでは価値が出にくい業種です。
しかし、買い手である関東の上場企業グループは、G社が持つ東北エリアでの強固な顧客基盤と稼働中の派遣スタッフという無形資産を高く評価しました。同業大手にとっては、ゼロから東北拠点を立ち上げるよりも、G社を買収する方が圧倒的に効率的だからです。このように、買い手のニーズと合致すれば、資産が少なくとも高い評価額がつくことが証明されました。
【宮城県・廃棄物処理】株式会社築館クリーンセンター|設備と許認可の価値
宮城県栗原市の産業廃棄物処理会社、築館クリーンセンターの事例です。同社は広大な処理施設と、新規取得が極めて困難な許認可を持っていました。
買い手である投資ファンドは、これらの設備資産の価値に加え、地域に不可欠なインフラとしての事業の継続性・安定性を高く評価しました。装置産業においては、設備投資の履歴やメンテナンス状況、そして許認可という参入障壁そのものが、強固な企業価値となります。適切な相手に巡り合うことで、地方の設備産業が正当に評価された事例です。
まとめ
M&Aにおける企業価値は、決算書の数字だけで決まるものではありません。特に東北の企業においては、人材の定着率や商圏の独占性、そして将来への期待値といった見えない資産が、評価額を大きく左右します。
自社の価値を過小評価せず、かといって独りよがりな高値にも固執せず、市場から見た適正価格を知ることが、M&A成功の第一歩です。そのためには、相続税評価ではなく、M&Aの市場価値を熟知した専門家の査定を受けることが不可欠です。
まずは自社にどれだけの価値があるのか、無料査定で確認することから始めてみてください。その数字が、会社の新たな可能性を広げるきっかけとなります。
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